ここにはアジアの人が多く住んでいる。一年を通じて、イベントや日常生活の中で様々なつきあいがある。そしてこの春、その中でも特に心のつながりが強いと感じている外国の友人に仕事としてのおつきあいをお願いした。残念なことに、2件とも契約に至らなかった。友人関係は上手くいっても、雇用関係は国が違うと難しいのはなぜかと長い間考えている。今日、ひとつの答えが見つかった。1件目は中国であった。中国と日本の貨幣価値は労働内容を加味すると3倍から4倍の差があるようだ。2件目はネパールであった。ネパールと日本の貨幣価値は約7倍の差があると聞いている。私は、自分が逆の立場だと仮定し、具体的に想像してみた。母国よりも4倍から7倍の賃金を手にする時に、私は相手をどう感じるだろう。例えば、1時間800円のアルバイト料が単純に3200円〜最大5600円にもなるのだ。3時間働いた時には、9600円〜16800円にもなる。なんて恵まれている国の人なんだろう、相手は同じ労働条件を主張してくれていると理解しつつも、なぜ自分はこんなにも人間としての差を感じなければならないのかという不条理を実感してしまうかもしれない。それとも、大金をくれる人物だから、これまでの友人という枠を外れて上手く利用するのもよいのかもしれないとの考えが頭をよぎり、自分に嫌悪感を抱いてしまうかもしれない。
いずれにしても、これまでの友人関係は、”貨幣価値の差”という異なる要素によって何かが変わってきてしまうことが予想される。普段から友人として家へ招いたり招かれたりのつきあいを繰り返してあたためてきた友人関係が、賃金の話を通してくずれてしまった。格差のある人を助けようという気持ちでお願いしたのではなかった。国に関係なく、本当に手伝ってもらいたい人だからお願いしたのだった。でも、相手のことをそこまで思いやることができずに、いやな気持ちにさせてしまったのだと思う。時がきたらこの思いを包み隠さず友人達へ告白してみよう。もう一度信頼関係を積み上げることができる日が来ることを信じて。